2014年 09月 20日
【西尾通信】掟上今日子の備忘録・第1話【感想】 |
【発売後追記】
第2話まで読んだ。http://tomoealone.exblog.jp/22807326/
【追記終】
続・終物語の初回出荷限定付録、「西尾通信」特別号に、10月19日刊行の新シリーズ「掟上今日子の備忘録」の第1話が先行して掲載されていました。新<シリーズ>? シリーズになるんすか。シリーズ化が既に決定なんすか? 分からん。
何はともあれ感想文。と軽い内容紹介? 説明?
西尾維新本人が言うには、久しぶりのミステリー。主人公の掟上今日子さんは、キャッチコピーの「今日子さんには今日しかない」の通り、寝て起きたら記憶がなくなる探偵。1日で事件を解決して、次に出会った時にはまた、初めましてと名刺を渡される。一定期間で記憶が無くなる系の話は、最近ちょいちょい見ますが、「このテーマを西尾維新が書いたら、どんな事が起きるだろう」と興味をそそられました。
横道にそれますが、例えば「魔法少女」というテーマ。漫画やアニメでこれまで多く作品があったのでしょうが、「このテーマを、あの【虚淵さん】が」というのが、あの有名な「まどかマギカ」。ありふれた魔法少女モノとは一線を画する斬新な作品が反響を呼びました。ちなみに、西尾維新が魔法少女を書いたモノが「新本格少女りすか」。こちらも西尾色が良くも悪くも濃く出ており、巷にありふれた魔法少女とは違う作品が出来上がっています。いえ、まだ途中でした、出来上がりつつあります、が正しい。
それはどうでもいいとして。
閑話休題です。
まだ発売されていない本ですので、あくまで個人の推測ですが「記憶が無くなる系」と西尾維新のミックスなモノ、それが掟上今日子さんになるのではないかな、と思っています。
登場人物の名前をもう1人挙げて、彼のキャラクタを紹介しなければ、ストーリーは語りづらいという人がいます。語り部の隠館厄介(かくしだてやくすけ)さんです。相変わらずのネーミングです。ホームズを語る時にワトソンが不可欠であるように、探偵ものには語り部が求められています。しかしながら、ワトソン氏らと隠館さんが決定的に違うところは、前者が常に助手であるのに対して、後者は容疑者である事でしょう。
旅行先で名探偵コ○ンと出会ったんだが、というネタがありますが、いつだって名探偵は何かすると何故か事件に巻き込まれます。でもそうではなくて、名探偵でもないただの一般人なのに事件に巻き込まれてしまう、可哀想な人、それが隠館厄介のキャラクタ。いつも巻き込まれて、いつも疑われてしまう残念な方。
それで、彼は自衛の手段として、事件に巻き込まれて疑われてしまった時には、探偵を呼ぶ。そういう構造の、珍しい人間関係、或いは人間無関係で語られる、今日子さんの物語です。
今回、第1話では、「1日で記憶を失ってしまう今日子さんだからこそ」という事件が起きたので、例によって最も疑われた隠館が今日子さんを呼んで、事件の解決を依頼したという事でした。
事件の内容、トリックなどはそれほど斬新なものでもありませんでした。しかしそれはがっかりする前触れとして悲観する要素ではないと思います。まだ第1話で、今日子さんをはじめとしたキャラの説明など、作法の部分などを語っている部分もあり、むしろ事件の解決はこの程度の方がスッキリしていて分かりやすいのではないでしょうか。
その中で1つ、この章の優秀だったと思う点をと問われれば、推理中に起きてしまった、とあるハプニングへの対処と、それに連動した事件の解決方法を挙げます。起承転結でいう、転の部分が良かったと。具体的には読んでいただきたいと思うとしか書きませんが、まさか1話目からその展開を使っちゃうのかと思わされました。
そのハプニング以外にも、記憶リセット+探偵という構図から「こういう展開があったら面白そうだ」と想像をして読み始めたのですが、「え、1話目からその設定使っちゃって大丈夫なの!?」「それはシリーズの後の方で1本のネタになっただろうに」と、ぼっち脳内会議がパニックになるような程、“出し惜しみをしない”、今日子さんだからこその色々な事例がいくつも話されてしまっていました。1つ、みなさんの思いつきそうなところで言うと、寝たらリセットされる記憶だったら、徹夜するような難事件。とか。それを第4話ぐらいにしてもいいんでしょうけど、隠館が、過去にこういう事件で3徹した、とか地の文章で早くも喋っちゃうのです。この全力さは素晴らしいと思いました。
早くから全力疾走してる感は、次はそれ以上のものを書かないと読者は納得しないみたいな、自らハードルを上げているようにも思えるのですが、きっと西尾維新だと、そのハードルを跳ぶ事もくぐる事もなく、蹴り倒したり、隣のレーンを走る事にしたり、そういう展開が待っているんじゃないかなぁと思います。
推理小説では「犯人当て」「動機当て」「方法当て」の3つがメインだと言われます。でも私の予想では、この第1話でもそうでしたが、「どうやって探偵は解決させるのか」を主軸に据えたストーリー展開がなされるのではないかと思います。折角面白い設定のキャラクタですので、「探偵の活躍ぶり」がクローズアップされるのも悪くないでしょう。
多分どっかの掲示板とかだと、何だそれ、もっと凄いアイデアを持ってこいよ、なんて言われそうですが、そうではないと私は声量をマックスにして言いたい。トリックが優れているものばかりが良質な推理小説ではないと。解決までに至る道のりも重要で、楽しみの1つではないのかと。
私は、どれとは言いませんが、推理編の最後の方で脇役が何か喋って、それにヒントを得た探偵が「そうか! なるほど!」というスタイルの推理物の解決方法は好きではありません。いや、はっきり言って嫌いです。だってそれ、偶然じゃん。脇役がたまたまジュースをこぼしたとか、テレビで何かニュースが流れたとか、窓が開きにくいから手伝ってと言われたとか、それで閃いて謎が解けたからって、何が名探偵だと思います。もしくは、誰かに話を聞いたら次の誰かがどうとかで、一段落したら丁度あっちから電話がかかってきたとかで、流れ作業で次々と用意されたように展開していく都合のいい探偵も嫌いです。あたかも最初から整っていた舞台の上で1つずつ順番にスイッチを入れていけば、自然と謎が解けてしまう超名探偵。
その点では、今日子さんは私を失望させるタイプの名探偵ではないようで安心しました。まだ油断はできませんが、偶然だとか用意された舞台に頼らない優秀な名探偵であってほしいと、個人的にはですが、そう思います。
また、1話から2話への繋ぎ(きっと繋ぎになると思われる部分)の理由づけも私好みでした。これも何とは言いませんが、1話で推理に関わって、その際に何か良く分からないけど探偵役に気に入られて、探偵役の開いている古本屋に雇われて、だから2つ目以降の事件にも必然として関わることになった、とかいう良く分からない理由付けで巻き込まれていく語り部、なんて大嫌いです。
その辺りも今日子さんと隠館の関係が今後なんでこうやって続いて行くのだろうか、というのは、かなり納得できる理由が作られていたと思います。特に、今日子さんは明日になったら事件の事も、依頼人の隠館の事も忘れてしまうはずなのです。また隠館からしても、数多くいる探偵の中からわざわざ癖のある今日子さんを選ぶ必然性は(あれがなければ)ないのです。だからこその、1話と2話の重要な繋ぎ。助手でもない彼が、以降も語り部になっていける訳。
こういうポイントってあまりみんな重要視しないんですかね? 私は何て言うか、ご都合主義的に物事が転がってストーリーがまとまって大団円というのに、懐疑的なのですが。ご都合主義が現実的じゃないからつまらない、もっとリアリティを、という訳ではなく、上手く言えないな、ご都合主義よりもピースの繋ぎ目により良いパーツが使われている時の爽快感、みたいな。すいません、言葉に出来ない感覚的なお話かもしれません。でも、こう、必然性の強いストーリーを求めている感覚が伝われば幸いです。
これまでも西尾維新作品には「そういう」私の好きな、私の欲するお話が沢山ありました。だから、今日子さんもそうであってほしいと願います。
これから2話以降はどうなって行くのでしょうね。1話が面白かったので、期待と妄想が膨らみます。
ベタなところでは、語り部が依頼人・被疑者という事なので、どこかで「犯人は隠館さん、あなたですね」という展開も考えられます。「自分がやったと言っても信じてもらえない、でも解決しない訳にはいかない。だから私に謎を解いてもらう事にした。違いますか?」みたいな。
まあ、こんなの当たらないと思いますよ。何せ西尾維新のミステリですから。これをもう3回ぐらい捻ってプレスして小麦粉をまぶして180度でカリッと揚げた(どんな例えだ)ような、超展開が待っているのだと信じてワクワクしています。
あるいは、途中で話した、過去にあったという事件を振り返る形というのも十分にアリでしょう。その際には「あれ? それはこうしないと、過去編から『現在』へ辻褄が合わなくなるぞ!?」みたいなハラハラ感を煽るような内容で進行するのではないでしょうかね。
いずれにしても、まだ1話の数十頁を読んだだけ。
少なくとも1冊は楽しみにしてあげてもいいなと、謎の上から目線で、そんな風に思える内容でした。控えめに言ってるけど、もっとはっちゃけていいなら、すっげえ楽しみだと叫びたい気分です。
発売は来月。待ち遠しいですね。
第2話まで読んだ。http://tomoealone.exblog.jp/22807326/
【追記終】
続・終物語の初回出荷限定付録、「西尾通信」特別号に、10月19日刊行の新シリーズ「掟上今日子の備忘録」の第1話が先行して掲載されていました。新<シリーズ>? シリーズになるんすか。シリーズ化が既に決定なんすか? 分からん。
何はともあれ感想文。と軽い内容紹介? 説明?
西尾維新本人が言うには、久しぶりのミステリー。主人公の掟上今日子さんは、キャッチコピーの「今日子さんには今日しかない」の通り、寝て起きたら記憶がなくなる探偵。1日で事件を解決して、次に出会った時にはまた、初めましてと名刺を渡される。一定期間で記憶が無くなる系の話は、最近ちょいちょい見ますが、「このテーマを西尾維新が書いたら、どんな事が起きるだろう」と興味をそそられました。
横道にそれますが、例えば「魔法少女」というテーマ。漫画やアニメでこれまで多く作品があったのでしょうが、「このテーマを、あの【虚淵さん】が」というのが、あの有名な「まどかマギカ」。ありふれた魔法少女モノとは一線を画する斬新な作品が反響を呼びました。ちなみに、西尾維新が魔法少女を書いたモノが「新本格少女りすか」。こちらも西尾色が良くも悪くも濃く出ており、巷にありふれた魔法少女とは違う作品が出来上がっています。いえ、まだ途中でした、出来上がりつつあります、が正しい。
それはどうでもいいとして。
閑話休題です。
まだ発売されていない本ですので、あくまで個人の推測ですが「記憶が無くなる系」と西尾維新のミックスなモノ、それが掟上今日子さんになるのではないかな、と思っています。
登場人物の名前をもう1人挙げて、彼のキャラクタを紹介しなければ、ストーリーは語りづらいという人がいます。語り部の隠館厄介(かくしだてやくすけ)さんです。相変わらずのネーミングです。ホームズを語る時にワトソンが不可欠であるように、探偵ものには語り部が求められています。しかしながら、ワトソン氏らと隠館さんが決定的に違うところは、前者が常に助手であるのに対して、後者は容疑者である事でしょう。
旅行先で名探偵コ○ンと出会ったんだが、というネタがありますが、いつだって名探偵は何かすると何故か事件に巻き込まれます。でもそうではなくて、名探偵でもないただの一般人なのに事件に巻き込まれてしまう、可哀想な人、それが隠館厄介のキャラクタ。いつも巻き込まれて、いつも疑われてしまう残念な方。
それで、彼は自衛の手段として、事件に巻き込まれて疑われてしまった時には、探偵を呼ぶ。そういう構造の、珍しい人間関係、或いは人間無関係で語られる、今日子さんの物語です。
今回、第1話では、「1日で記憶を失ってしまう今日子さんだからこそ」という事件が起きたので、例によって最も疑われた隠館が今日子さんを呼んで、事件の解決を依頼したという事でした。
事件の内容、トリックなどはそれほど斬新なものでもありませんでした。しかしそれはがっかりする前触れとして悲観する要素ではないと思います。まだ第1話で、今日子さんをはじめとしたキャラの説明など、作法の部分などを語っている部分もあり、むしろ事件の解決はこの程度の方がスッキリしていて分かりやすいのではないでしょうか。
その中で1つ、この章の優秀だったと思う点をと問われれば、推理中に起きてしまった、とあるハプニングへの対処と、それに連動した事件の解決方法を挙げます。起承転結でいう、転の部分が良かったと。具体的には読んでいただきたいと思うとしか書きませんが、まさか1話目からその展開を使っちゃうのかと思わされました。
そのハプニング以外にも、記憶リセット+探偵という構図から「こういう展開があったら面白そうだ」と想像をして読み始めたのですが、「え、1話目からその設定使っちゃって大丈夫なの!?」「それはシリーズの後の方で1本のネタになっただろうに」と、ぼっち脳内会議がパニックになるような程、“出し惜しみをしない”、今日子さんだからこその色々な事例がいくつも話されてしまっていました。1つ、みなさんの思いつきそうなところで言うと、寝たらリセットされる記憶だったら、徹夜するような難事件。とか。それを第4話ぐらいにしてもいいんでしょうけど、隠館が、過去にこういう事件で3徹した、とか地の文章で早くも喋っちゃうのです。この全力さは素晴らしいと思いました。
早くから全力疾走してる感は、次はそれ以上のものを書かないと読者は納得しないみたいな、自らハードルを上げているようにも思えるのですが、きっと西尾維新だと、そのハードルを跳ぶ事もくぐる事もなく、蹴り倒したり、隣のレーンを走る事にしたり、そういう展開が待っているんじゃないかなぁと思います。
推理小説では「犯人当て」「動機当て」「方法当て」の3つがメインだと言われます。でも私の予想では、この第1話でもそうでしたが、「どうやって探偵は解決させるのか」を主軸に据えたストーリー展開がなされるのではないかと思います。折角面白い設定のキャラクタですので、「探偵の活躍ぶり」がクローズアップされるのも悪くないでしょう。
多分どっかの掲示板とかだと、何だそれ、もっと凄いアイデアを持ってこいよ、なんて言われそうですが、そうではないと私は声量をマックスにして言いたい。トリックが優れているものばかりが良質な推理小説ではないと。解決までに至る道のりも重要で、楽しみの1つではないのかと。
私は、どれとは言いませんが、推理編の最後の方で脇役が何か喋って、それにヒントを得た探偵が「そうか! なるほど!」というスタイルの推理物の解決方法は好きではありません。いや、はっきり言って嫌いです。だってそれ、偶然じゃん。脇役がたまたまジュースをこぼしたとか、テレビで何かニュースが流れたとか、窓が開きにくいから手伝ってと言われたとか、それで閃いて謎が解けたからって、何が名探偵だと思います。もしくは、誰かに話を聞いたら次の誰かがどうとかで、一段落したら丁度あっちから電話がかかってきたとかで、流れ作業で次々と用意されたように展開していく都合のいい探偵も嫌いです。あたかも最初から整っていた舞台の上で1つずつ順番にスイッチを入れていけば、自然と謎が解けてしまう超名探偵。
その点では、今日子さんは私を失望させるタイプの名探偵ではないようで安心しました。まだ油断はできませんが、偶然だとか用意された舞台に頼らない優秀な名探偵であってほしいと、個人的にはですが、そう思います。
また、1話から2話への繋ぎ(きっと繋ぎになると思われる部分)の理由づけも私好みでした。これも何とは言いませんが、1話で推理に関わって、その際に何か良く分からないけど探偵役に気に入られて、探偵役の開いている古本屋に雇われて、だから2つ目以降の事件にも必然として関わることになった、とかいう良く分からない理由付けで巻き込まれていく語り部、なんて大嫌いです。
その辺りも今日子さんと隠館の関係が今後なんでこうやって続いて行くのだろうか、というのは、かなり納得できる理由が作られていたと思います。特に、今日子さんは明日になったら事件の事も、依頼人の隠館の事も忘れてしまうはずなのです。また隠館からしても、数多くいる探偵の中からわざわざ癖のある今日子さんを選ぶ必然性は(あれがなければ)ないのです。だからこその、1話と2話の重要な繋ぎ。助手でもない彼が、以降も語り部になっていける訳。
こういうポイントってあまりみんな重要視しないんですかね? 私は何て言うか、ご都合主義的に物事が転がってストーリーがまとまって大団円というのに、懐疑的なのですが。ご都合主義が現実的じゃないからつまらない、もっとリアリティを、という訳ではなく、上手く言えないな、ご都合主義よりもピースの繋ぎ目により良いパーツが使われている時の爽快感、みたいな。すいません、言葉に出来ない感覚的なお話かもしれません。でも、こう、必然性の強いストーリーを求めている感覚が伝われば幸いです。
これまでも西尾維新作品には「そういう」私の好きな、私の欲するお話が沢山ありました。だから、今日子さんもそうであってほしいと願います。
これから2話以降はどうなって行くのでしょうね。1話が面白かったので、期待と妄想が膨らみます。
ベタなところでは、語り部が依頼人・被疑者という事なので、どこかで「犯人は隠館さん、あなたですね」という展開も考えられます。「自分がやったと言っても信じてもらえない、でも解決しない訳にはいかない。だから私に謎を解いてもらう事にした。違いますか?」みたいな。
まあ、こんなの当たらないと思いますよ。何せ西尾維新のミステリですから。これをもう3回ぐらい捻ってプレスして小麦粉をまぶして180度でカリッと揚げた(どんな例えだ)ような、超展開が待っているのだと信じてワクワクしています。
あるいは、途中で話した、過去にあったという事件を振り返る形というのも十分にアリでしょう。その際には「あれ? それはこうしないと、過去編から『現在』へ辻褄が合わなくなるぞ!?」みたいなハラハラ感を煽るような内容で進行するのではないでしょうかね。
いずれにしても、まだ1話の数十頁を読んだだけ。
少なくとも1冊は楽しみにしてあげてもいいなと、謎の上から目線で、そんな風に思える内容でした。控えめに言ってるけど、もっとはっちゃけていいなら、すっげえ楽しみだと叫びたい気分です。
発売は来月。待ち遠しいですね。
by tomoe-alone
| 2014-09-20 21:45
| 西尾厨